3年目のキセキ~タンゴコンサートの照明プランを任されて~

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PACに入社し3年目、もしくはそれに近しき若手に、日頃の思いや、仕事を通じて学んだこと、びっくりしたこと、発見したことなどを自分の目線で思い思いに書いてもらっています。

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*画像はイメージです

 

PACでは、「PAC REPORT」という社内報を年4回定期的に社内へ発行しています。
その中の「3年目のキセキ」という企画では、PACに入社し3年目、もしくはそれに近しき若手に、日頃の思いや、仕事を通じて学んだこと、びっくりしたこと、発見したことなどを自分の目線で思い思いに書いてもらっています。

こちらの記事は、そのPAC REPORT「3年目のキセキ」からの抜粋となります。

新人としてPACへ入社し、ベテランに成長するまでには、大変に長い時間を要します。苦心し、日々挑戦し、ほんのちょっと成長した自分を発見する。そんな彼らの軌跡、一人ひとりのストーリーです。

今回は、AHホール照明担当、M.Yさん(ホール名と筆者名はイニシャルに変えさせて頂きます)です。それではどうぞ。


 

異業種より転職し、何かのご縁でPACに入社させていただき、気が付けばあっという間に数年の月日が過ぎてしまいました。

アッパーホリゾントライト、シーリングライト、地明かり、前明かりなどなど・・・。聞く単語聞く単語馴染みのない言葉ばかりで、知っていたことといえば上手・下手、平台くらいなものでした。何が分からないのかも分からない状況に困惑していたこと、逆に新しい世界に胸躍らせていたことを思い出します。

何の知識もなく物覚えの悪い自分に、丁寧にそして根気強く教えて下さった先輩方には申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。

「3年目のキセキ」ということで、はじめてプランを務めさせていただいた時のことを書こうと思います。

バンドネオン・ピアノ・ヴァイオリン・コントラバス・ギターの6人編成、曲目数16曲、約2時間のタンゴコンサートでした。プランをやる事が決まり、まず仕込み図を書き始める前に、"バンドネオン"とはいったい何なのか、からはじめる事となりました。

そして、仕込み図を考え始めてから書き上げるまでの時間の掛かること。AHホールでもプライベートでもクラシックやタンゴの演奏会の明かりを見る機会がなく、どんな明かりでどんな色を使って組み立てていけば良いのかあまり想像が出来ませんでした。とにかくなんとか形にしなくてはいけないと思い、いろいろな仕込み図や動画から拾い集めたものを組み合わせていくことにしました。色を変えたり吊り位置を変えたりと、何度書き直してもこの仕込み図ではいけない気がして、書き直す度に大先輩方に相談していました。はじめは「考えすぎずに楽しんでやりなさい」だったものが「とりあえず一度仕込み図を完成させなさい」に変わり、とりあえずこれで・・と仕込み図を書き上げた気がします。

やっとの思いで仕込み図を書き終えましたが、まだまだやらなければいけないことは山ほどありました。セットリストをもとに曲を調べ、曲を聴き、曲のイメージをふくらませ、曲の秒数をはかり、Cueシート(になりきれていないCueシートでした)を書き起こし、仕込みをして、明かりをつくり、修正して、また明かりをつくり・・・。少しでも時間があれば曲を聴き、どうしようこうしようと頭を悩ませていました。誰かがやっているのを見ていた時と違い、実際に自分で照明を考えるということは、とても頭を使いとても胃の痛い作業でした。

たくさんの方々にアドバイスをいただき、助けていただきながらなんとか本番を終えることが出来ました。
終演後、主催の方に「素敵な明かりでした」とのお言葉をいただきました。が、今でもあれはきれいな明かりだったのか、どんな明かりだったのか、とよく分からないままです。写真にくらいおさめておけば良かったなと思いますが、その時はそんな余裕もなく終わってしまったのでした。

初めてのプランだったということもあると思いますが、一回の催し物での16曲でも大変な時間と労力を使ったのに、もっと複雑で何本ものプランを書く方々はどんな頭の回転でどれだけの引き出しを持っているのかと不思議でなりません。反省点はいろいろとありましたが、楽しんで余裕をもって出来るだけの知識と経験が必要だなと終わってみて思いました。

「自分の好きな色を見つける」「お客さんはお金を払って見に来ている」ということもとても印象に残っています。

以上でレポートを終わります。当時の事を思い出す良い機会となりましたが、改めて書いてみると悩んでいたことを思い出し胸が少しどきどきします。
最後に、このレポートを書かなくてはいけないと決まった時から、何を書こう何も書けない・・・、と騒ぎ続けた私を見守ってくださった事業所の皆様。なんとか書き終えました。ご迷惑をおかけしました、ありがとうございます。

 


 

㈱パシフィックアートセンターは、劇場、ホールの舞台設備、照明、音響、映像まで舞台技術をトータルサポートする会社です