今回の舞台用語集は音響のマルチ(マルチボックス・マルチケーブル)に関してです。
マルチボックスとは、インプット(マイクやラインなど卓に入力するもの)やアウトプット(スピーカーや録音デッキなどに出力するもの)の回線を、マルチケーブルでまとめて送ることが出来るものです。
アナログマルチ
写真:上から32ch、16ch、8chのマルチボックス
マルチボックスには色々な種類がありますが、ステージ上では16chのマルチボックスが良く使われます。
8chマルチはマイク本数が少ない時などに使い、32chマルチはステージ上に設置した16chマルチが2系統ある場合その二つを集約する時などに良く使われます。集約することによって、ステージから客席にあるPA卓(ハウス卓)までケーブルを引き回す際に、1本の引き回しで済むことになります。
図:16ch2系統を32chに集約
16chマルチが2系統も必要ない時は、マルチボックスの両端にマルチコネクタが出ているタイプのボックスであれば、ケーブルを貫通させて下手・上手に同じ系統のマルチを引くことも出来ます。
図:16chマルチ(1系統)を貫通
ステージの下手と上手両方にボックスがあることによって、下手に近い楽器は下手のマルチへ、上手に近い楽器は上手のマルチへ接続することが出来ます。
写真:卓に繋がる先バラ
卓側では、上記の写真のようなセパレートコード(現場では先バラという言い方をすることが多いです)を使って卓のインプットへ回線を繋ぐことが出来ます。卓側でも先バラではなくボックスを使っても良いのですが、その際は立ち上げ用のケーブルが別途必要になります。
デジタルマルチ
写真:YAMAHA Rio3224-D
昨今ミキサー卓のデジタル化が進んでいますが、それに伴いマルチもデジタルのものが主流になりつつあります。I/O(アイオー)や、ステージボックスという言い方をすることもあります。
マルチをデジタルにすることによってアナログマルチのような太くて重いケーブルを引き回す必要がなくなり、LANケーブルのような細くて軽いケーブルの引き回しで済むようになります。
アナログマルチの時は3~4人がかりでケーブルを引き回していましたが、デジタルのケーブルであれば1人で容易に引き回すことが出来、作業効率のアップに繋がります。
また、卓に直接デジタル入力出来るものであれば、先バラをする必要もありません。
写真:デジタル卓に入力されるイーサコン
デジタルでは機器同士を接続する際、機種によって設定の仕方やネットワークの繋ぎ方が異なりますので注意が必要です。
図:デイジーチェーン接続例
図:スター接続 接続例
図:リング接続 接続例
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