雪籠"ゆきかご"

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劇場等で雪が降っている視覚効果の為に使う道具として用いる「雪籠」薄い和紙を小さく切って籠に入れ、観客から見えない高さに吊り、籠につけた紐を舞台の袖から引っ張って揺り動かす事で紙雪が籠の網目から落ちて、あたかも雪が降っているように見えます。

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劇場等で雪が降っている視覚効果の為に使う道具として用いる「雪籠」

薄い和紙を小さく切って籠に入れ、観客から見えない高さに吊り、籠につけた紐を舞台の袖から引っ張って揺り動かす事で紙雪が籠の網目から落ちて、あたかも雪が降っているように見えます。

最近は吊るスペースの都合で雪ネットと呼ばれるものを使うこともありますが、降らせる量の都合等では雪籠を使うことの方が多いようです。

雪ネット.jpg

↑雪ネット仕込の様子

今回お話を伺ったのは入社5年目の女性社員。雪籠、雪ネット、どちらも操作経験はありますが、まだ始めたばかりとのこと。いろいろな先輩から指導をうけながら勉強中です。

160127雪籠01.jpg

---練習はどんな時にやるのですか?

「練習をする機会はありません。舞台稽古の時に教わりながら身につけるしかないですね。それに降らした後の雪掃除も大変ですし。」

---むずかしい点は?注意点は?

「ひとくちに雪を降らせるといっても、それぞれの場面で量も違う。始めはチラチラ、徐々に大雪というようにインカムで指示がくる。情景に合わせて調節するのが難しいです。

この劇場では一本引きという手法で、3基4基の雪籠をロープでつなぎ、一本の手綱ロープを引き寄せて、それを緩めた時に戻る籠に再度ロープを引いてテンションをかけ、その衝撃で雪を降らせます。一本のロープでの操作なので結構重いです。

雪ネットならば一回の引きで全体的に振るので扱いやすいけど、籠だとなかなか思うようにいかず、初めて稽古で操作した時は全然降ってくれませんでした(笑)

引き方によって上手下手均等に降らせてこそ職人技と呼べるのでしょうけど、降らせているつもりが、「上手降ってないよ!」とインカムから注意されたりなんていつもです(汗)」

---失敗談はありますか?

「雪ネット使用の時、別の吊り物にロープが絡んでどんなに引いても全く動かなくなったこと。自分も訳がわからず固まりました。」

---自分の技の名前なんかはありますか?

「必殺○○引きとか、狂喜乱舞○○引きとか?特にはありません。それよりも今は勉強です。」

ベテランの元劇場配属だった大道具さんにも話を聞いてみました。

「私が劇場で雪降らしをしていた時は、大劇場では6籠の雪籠を大臣上で引いていました。舞台稽古の時に舞台監督に雪のキッカケを確認しても、「台本のここからチラチラ、ここから増えて、ここで止む。ここからは大雪。」というようなアバウトなキッカケでした。なので、芝居の邪魔にならない効果的な雪になるように降らせるタイミングや量には、かなり気を使いました。

籠から雪を降らせる技術だけでなく、いわゆる芝居ごころが必要です。降らせている場所から見る雪と正面から見る雪は、雪の量の見え方が違うので、正面から見てどのくらいの降りになっているのかを知ることも大切です。

劇場内の空調や観客の入りによって空気の流れが変わるので、それも考慮しながら降量なども調節するのが難しいです。」

古くからある技法ですが、目に見えないところでいろいろ工夫があるようです。

 


 

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