ステレオマイク

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ホール設備として、舞台前方の客席天井からワイヤーで3点吊りされているマイクをご覧になる機会もあると思いますが、オーケストラなどの音源全体を一方向の"モノラル"ではなくL/Rの広がりを持たせた"ステレオ"として収音したい時に活躍してくれるのが「ステレオマイク」です。

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ホール設備として、舞台前方の客席天井からワイヤーで3点吊りされているマイクをご覧になる機会もあると思いますが、オーケストラなどの音源全体を一方向の"モノラル"ではなくL/Rの広がりを持たせた"ステレオ"として収音したい時に活躍してくれるのが「ステレオマイク」です。

ステレオを"感覚"として捉えるとその好みは人によって様々ですが、音響に携わる人物たちも例外ではなく、音として生み出される芸術を記録に残すためにマイクの設置方式も様々に考案されてきました。

今回は、それら5つの方式について説明させていただきます。

1.【MS方式】

単一指向性(Mid 以下M)と、双指向性(Side 以下S)の2種類のマイクを組み合わせる方式で、MとSは同軸上に、Mに対してSは90度の角度に設置します。

指向性を図に表すとこのようなイメージです。

 MS方式.png

音響調整卓(ミキサー)にそれぞれの音声を2分岐し4系統に分けて入力します。PANを用いてL/Rへ出力するのですが、L側にはM+Sを。R側にはSの極性を反転させてM-Sとしたものを振り分けます。MS方式の利点は、+S/-Sのミックスレベルを調整することによりステレオ空間の広がり幅を調整でき、Mのみのモノラル音声も再現できることにあります。

ワンポイントに設置するため位相差は生じませんが、ハース効果(音の到達に時間があると早く到達した側に音が寄って聞こえる)は得られません。

MS方式として設計されたマイクロフォンからL/Rの信号を取り出すには、別途マトリクスボックスを必要とします。

 

2.【XY方式】

2本の単一指向性マイクをワンポイントに90度の角度で向き合わせて設置し、収音される音の方向性やレベル差のみでステレオ感を生み出す方式です。マイクの角度を広げるとセンターの音が薄れてしまうので135度までが望ましいとされています。MS方式とは違いハース効果を得られます。

XY方式.png

 

3.【AB方式】

2本の単一指向マイクを平行にならべ、それぞれに音声が到達する時間差(ハース効果)によってステレオ感を生み出す方式。マイクの設置間隔は20cm~1mほどが効果的な範囲で、それ以上に広げると2本の中間の音が薄まったり、LRに位相差が生じたりします。

 AB方式.png

ハース効果によって、音源との距離が短いR側に音が寄って聴こえます。

 

4.【ORTF方式】

フランス放送協会によって考案された方式で、2本の単一指向性マイクを人間の左右の鼓膜の距離である17cmの間隔に110~115度に開いて設置します。ヘッドフォン・イヤフォン再生に限り立体音響再生を可能にする、バイノーラル方式のダミーヘッド録音に似た発想ですが、ORTF方式はSP再生時もステレオ感を得られます。またハース効果も人間の感覚に近いかたちで得られます。

ORTF方式.png

5.【NOS方式】

オランダの公共放送で用いられている方式です。XY方式と同じく2本の単一指向マイクを90度で設置しますが、図のようにマイクの収音部分(マイクカプセル)は30cm離します。AB方式とXY方式を組み合わせたような形で考案されたNOS方式は、AB方式で得られる空間の広がりや響きとXY方式で得られえるステレオ感の利点を生かし、定位感(音源がその場所にいるように聴こえる)の再現に優れた収音方法です。

LiveVoiceステレオマイク「NOS方式」絵図.jpg