けさらんぱさらん商会 音響レポート 後編

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『けさらんぱさらん商会第6回公演 酔・待・草 』企画第二弾!

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『けさらんぱさらん商会第6回公演 酔・待・草 』企画第二弾!

前回の記事をご覧になっていない方はコチラ

 

公演終了後、音響プランナーの亀山さんと音響オペレーターの永井さんにインタビューをさせて頂きました。

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おはようございます。先日は本番お疲れ様でした。今日はよろしくお願いします。

 

亀山:こちらこそ、わざわざありがとうございました。よろしくお願いします。

永井:よろしくお願いします。

 

はじめに、渡邊修さんとお知り合いになり、一緒に仕事をするようになったきっかけなど、何かあればお願いします。

亀山:渡辺修さんとは亀山がバレエの音響をやっているときに、大道具さんとして来ていたときに知り合いました。 修さんの所属する「ユニワークショップ」の方々とは特に旅での「夜のミーティング」で可愛がられました。 その後、巡業で一緒に地方を回ったりもしました。

元々は同じ現場で一緒にお仕事をされていたのですね。

早速ですが、公演の音作りやきっかけで工夫したところや、大変だったことはどんなところでしょうか?

亀山:とにかく掛かりっきりになれないこと。稽古が進むにつれて状況がどんどん変わるので、稽古の時点で音源が十分にそろえられなかったことが大変でした。いつもやってることだけど、劇中の音は、元の音源を(出来るだけ)そのまま使わないことを意識してやりました。編集&録音するときには稽古のときの事や本番の劇場をイメージしたり、シーンに合わせて加工しています。その為、稽古を進めていく中、予定していたのより沢山の音が必要になり、作業が忙しくなったにも関わらず、途中でパソコンがフリーズしたり、HDDが壊れたりして、とにかく時間に追われてしまいました。

永井:私は亀山さんとは違い、主にオペレートが主な仕事でしたので、芝居に音をつけていくこと自体が難しかったです。台本は不条理演劇がベースで、まったく正解のない自由な本だったので、解釈に悩みました。極端なところ音なんてなくても成立する芝居なので......。風の音も、どこまで聞かせるか、とか。でも、風はけっこうキーワードなので、客席に印象つけたい。 話が進んで行く上での変化もつけていきたい。でも説明なんて台詞で十分なので、わざわざ長々と聞かせるのも、説明っぽくて煩わしくなるのかなーとか思って。

なるほど。今回、客席の壁側にウォールスピーカーが仕込んであるのは、そう言った演出をより印象づけるためのものだったのでしょうか?

亀山:そうですね。劇場全体を、客席も含めて、台本や舞台装置から連想される情景のイメージを音で表現するためです。 今回は「公園のような、丘のような、海の近くの......」と演出家が言った情景を、劇場全体で表現するためにウォールスピーカーを仕込みました。

永井:やっぱり風と波をどうやって印象つけるかは、今回の公演のキモでしたよね。 芝居のほとんどの時間、風と波を流していました。 基本には情景を表現しているんですけど、 台詞や役者の感情に時々入っていけるように......とか考えました。 客席と舞台を時々行き来したりもしました。 つまり、芝居の世界と現実の世界を繋ぐような存在なのかな~とか思ったりもして......。

確かに、客席を包み込むような風の音は印象的でした。太鼓の音も、低音の響きが心地よかったですね。客席の下に仕込まれていたサブウーファーの効果が感じられました。

亀山:風の音が客席を包み込むというように感じてもらえれば、狙い通りの結果です。 ウーファーは音楽をはじめ効果音の中にある低音を出すために用意しました。下見を兼ねて、劇場を観に行ったとときに、そこでプランをしていた音響さんが客席下にウーファーを仕込んでいたと聞いて、同じようにしようと思いました。 狙った効果としては「音の定位」「客席を包み込むような音の表現」「音のダイナミクスの表現」といったところでしょうか。劇場では客席に仕込んだスピーカーがお客さんに近いので、音量や音質、フェーダー操作に気を使いました。

最後に、今回楽しめた(楽しかった)部分はありますか? また、演劇の公演で心がけている部分はありますか?                                  

永井:ある意味、ひとり外れた役者みたいな立場でいました。 稽古場での役者同士の話合いを聞きながら、 次の日の音出しを変えたりして、結果それがいいね~なんて事になったりしました。音を入れる事で、 それぞれの役の立場が明白になっていったり、作品の方向性がハッキリ見えていったのは、やりがいに繋がりました。

それにしても、もっと、やりたかったですね。 自分のオペレートに満足できる日は、一日もなかったので。 たくさん課題が出来ました。 もっと勉強しようと思いました。

ほんとよ(笑)

亀山:音響というよりも、関わったすべての人たちと上手く(巧く)やっていく事を心がけています。 芝居に限らず音響がミスする事で流れを止めることになると、すべてがチグハグになってしまいますから。

本日は演劇の音響の奥深さが感じられる貴重なお話、大変勉強になりました。

お二人とも、お忙しいところありがとうございました!

亀山:ありがとうございました。

永井:お疲れ様でした。

筆者も稽古からゲネプロ~本番と取材をさせて頂き感じたことは、芝居の音響は、普通の現場とはまた少し違う、特殊な部分があるなと思いました。音で演技に表情をつけていく様子は、まさしく陰の役者と呼べるかもしれません。

小規模だからこそ一人ひとりの役割が大きく、とてもやりがいのある現場だと思いました。また、現場の雰囲気も良く、作品を考えながら創り上げていくこととはこういうことだと再確認した取材でした。